この記事の要点
- これは筆者が受けた3社の提示を比べた範囲の話。各社の平均単価ではなく、時期も1〜3年ずれている。
- レバテックは当初「80万〜」の提示が、クライアント面談での評価が高く83万円で成約。提示レンジの上限側に+3万円/月で着地した。
- 提示額は確定額ではない。下振れもあり得るので、面談前の数字をそのまま手取りの計算に使わないほうがよい。
- ギークスジョブは75万円で確定したが辞退した。出社必須・残業多めという現場条件が合わなかった。
- ITプロパートナーズは週3日リモートで55万円に着任。週5換算では低いが、残り2日をどう使うかまで含めると合っていた。単価の数字だけ並べると、この判断は説明できない。
- 交渉の余地があるのは契約更新時(3ヶ月・6ヶ月経過後)。初回は実績が見えないため買い叩かれやすい。
筆者はSES企業の経営者で、エージェントとは一部競合します
先に立場を開示します。筆者はSES企業を経営しています。フリーランスエンジニアに案件を発注する側です。つまりフリーランスエージェントとは一部で競合します。
同時に、筆者自身もフリーランスエンジニアとして複数のエージェントに登録し、面談を受けています。この記事に出てくる数字は、その本人の記録です。以下、数値はすべて2026年10月10日に整理した筆者本人の記録から引いています。
読む前に、範囲を限定させてください。ここに出すのは筆者が受けた3社の提示だけです。各社の平均単価でも、案件数でも、単価の分布でもありません。3人分でも10人分でもなく、1人分です。
時期もそろっていません。レバテックフリーランスが約2年前、ITプロパートナーズが約1年半前、ギークスジョブが約3年前です。1〜3年のずれがあります。市況も自分のスキルも、その間に動いています。単純な横並び比較として読まないでください。
その上で書きます。この記事の結論は1つです。エージェントから提示された額は、確定額ではありません。
3社の提示額と着地額を並べると、一致したものが1つもない
まず記録そのものを出します。提示された額と、実際にどこで着地したかの対応表です。
| エージェント | 時期 | 提示額(月) | 想定案件 | 着地 |
|---|---|---|---|---|
| レバテックフリーランス | 約2年前(2024年ごろ) | 80万〜85万円 | 大手Web系バックエンド(Go/React/AWS) | 83万円/月で契約成立 |
| ITプロパートナーズ | 約1年半前(2025年前半ごろ) | 50万〜65万円(週3〜4日) | スタートアップのCTO補佐・技術顧問 | 週3日リモート55万円/月で着任・継続中 |
| ギークスジョブ | 約3年前(2023年ごろ) | 70万〜75万円 | 老舗SIer配下の基幹刷新(Java/Vue.js) | 75万円で確定したが辞退 |
(2026年10月10日時点の筆者の記録より)
この表で最初に気づいてほしいのは、金額の大小ではありません。3社とも、提示が単一の数字ではなくレンジ(幅)だったという点です。
「80万円です」ではなく「80万〜85万円です」と言われます。幅があるということは、まだ決まっていないということです。面談を受ける前の段階で、確定した数字は存在していませんでした。
そして着地を見ると、提示レンジの中で3件ともバラバラの場所に落ちています。上限で確定したもの、レンジの中ほどで成約したもの、下限寄りで着任したもの。一致したものは1つもありません。
レバテックは「80万〜」の提示が、クライアント面談後に83万円へ上がった
上振れの実例を1件だけ詳しく書きます。レバテックフリーランスの案件です。
当初の提示は80万〜85万円/月でした。最終的な契約額は83万円/月です。提示レンジの下限80万円を基準にすると、+3万円/月で着地しました。年額に直せば36万円の差です。
重要なのは、数字が動いたタイミングです。エージェントとの面談の時点では動いていません。クライアント面談のあとに上がりました。評価したのはエージェントではなく、発注するクライアント側だったということです。
クライアント面談で深掘りされたこと
その面談で何を聞かれたかも記録に残っています。技術スタックの確認だけでは終わりませんでした。
- 直近のプロジェクトで、どんな意思決定をしたか
- トラブルが起きたとき、どう対応した実績があるか
- リモートでのコミュニケーションのスタイル
(2026年10月10日時点の筆者の記録より)
どれも「何ができるか」ではなく「どう動くか」を見る質問です。この3つのうちどれが効いて+3万円になったのかは、クライアント側の判断なので筆者には分かりません。そこは推測で埋めずに置いておきます。
希望単価は2段階で出すよう求められた
エージェント側からは、希望単価の出し方を指定されました。「最低ライン(これ以下なら受けない額)」と「目標ライン」を分けて出すよう求められています。
1つの数字だけを伝える形ではありませんでした。この聞かれ方については、別記事で3社分をまとめています。
フリーランスエージェント3社の面談で聞かれたこと|希望単価は「最低ライン」と「目標ライン」に分けて出すよう求められた
紹介までの速さも記録しておきます。レバテックは面談中から当日中に3件の提案がありました。そのうち1件は、即日でクライアント面談が設定されています。
上振れるなら下振れもあります。面談前の数字で手取りを計算しないほうがよいです
ここを成功談として読まれると困るので、対称的に書きます。
まず、83万円は提示レンジの上限85万円には届いていません。80万〜85万円という幅の中に収まった着地です。レンジを突き抜けたわけではありません。
そして、提示がレンジで示されるということは、下限側に着地する可能性も構造的に含まれているということです。80万〜85万円の提示なら、80万円で決まることもあり得ます。
ただし、筆者の記録に提示より下がった具体例は残っていません。確認できた範囲では、下振れの実例は手元にありません。なので「下がることもあります」とは書けますが、「こういうケースで下がりました」とは書けません。ここは正直に、資料に記載がなかったと書いておきます。
単価が決まっても、月の支払額は固定ではない
もう1つ、手取りの計算に関わる要因があります。契約の精算幅です。
筆者が常駐した準委任契約では、精算幅が140時間〜180時間(中間160時間基準)でした。準委任契約とは、成果物の完成ではなく業務の遂行に対して対価を払う契約形態です。精算幅は、この範囲の稼働なら月額が満額、という時間の幅を指します。
実際に下限を外した月があります。年末年始で稼働が130時間になった月です。140時間を下回った10時間分が、「単価 ÷ 160時間 × 10時間」の式で控除されました。
(2026年10月10日時点の筆者の記録より)
月額単価が決まっていても、営業日が少ない月は下回り控除が起きます。5月・8月・12月・1月はこのリスクがある月です。契約前に精算幅の下限を確認しておく必要があります。
つまり、面談前に聞いた提示額には、少なくとも2つの不確実性が乗っています。提示レンジのどこに着地するか。そして稼働時間が精算幅に収まるか。この2つが決まる前の数字で、年収や手取りを計算しないほうがよいです。
ギークスジョブは75万円で確定したあとに辞退しました
次は逆の記録です。金額が決まったあとに断った案件です。
ギークスジョブ経由の案件でした。約3年前、2023年ごろです。提示は70万〜75万円。提示レンジの上限である75万円で確定しました。金額の交渉としては、通った側です。
案件は老舗SIer配下の基幹システム刷新でした。Java/Vue.jsの構成です。
それでも辞退しました。理由は金額ではなく、現場の条件です。出社必須で、残業も多めという話でした。そこが折り合いませんでした。
この記録を武勇伝にするつもりはありません。辞退を勧めるつもりもありません。書いておきたいのは、確定したあとでも断るという選択肢が実際に存在したという事実だけです。筆者はそれを選びましたが、同じ条件で受けるのも当然に合理的です。
なお、辞退したあとエージェントとの関係がどうなったかは記録がありません。気になるところだと思いますが、確認できないので書けません。
週5換算で見たときの3社の傾向
もう1点、この案件に関連して記録してあることがあります。週5稼働で換算した場合の提示額の傾向です。
老舗・SIer系の案件が中心だったギークスジョブの提示(70万〜75万円)に対し、直請け比率の高いレバテック等の提示(80万〜85万円)のほうが、月5万〜10万円高い提示でした。
(2026年10月10日時点の筆者の記録より。筆者が受けた3社の提示を比べた範囲の話で、各社の平均単価ではありません)
この差がどこから来ているかについては、商流の深さが関わります。別記事で自社の実数を出して書いています。
フリーランスの手取りはマージン率より商流で決まる|SES経営者が自社の実数を出して説明します
週3日リモート55万円は、週5換算の数字だけでは説明できない選択でした
3件目の記録です。ITプロパートナーズ経由の案件です。
提示は50万〜65万円(週3〜4日)でした。着地は週3日リモートで55万円/月です。約1年半前、2025年前半ごろに着任し、現在も継続中です。案件はスタートアップのCTO補佐・技術顧問でした。
紹介までの速さは、レバテックとは違いました。マッチングの精査に2〜3日かかっています。週3〜4日という変則的な稼働の案件が多いためだと思われますが、ここは筆者の推測です。
この55万円という数字を、83万円と並べて「低い」と評価することはできません。稼働日数が違うからです。週5日の83万円と、週3日の55万円は、額面を直接比較する対象ではありません。
| レバテック案件 | ITプロパートナーズ案件 | |
|---|---|---|
| 稼働 | 週5日(常駐) | 週3日(リモート) |
| 月額 | 83万円 | 55万円 |
| 役割 | バックエンド開発 | CTO補佐・技術顧問 |
(2026年10月10日時点の筆者の記録より)
この案件を選んだのは、残り2日をどう使うかまで含めた判断でした。その2日の使い道の価値は、金額として記録に残っていません。だから表に書けません。
言い方を変えます。単価の数字だけを並べた表では、この選択は説明できません。エージェントの比較記事が単価だけで並ぶとき、こういう判断は表から落ちています。
交渉の余地が実際にあるのは初回ではなく契約更新時です
ここからは発注する側、SES企業の経営者としての話になります。構造の説明です。特定の交渉手法は勧めません。
初回は実績が見えないため買い叩かれやすい
発注側から見ると、初めて契約する相手の単価は上げにくいです。実績が見えないからです。見えているのは経歴書と面談だけです。その状態で高い単価を出すのは、発注側にとってはリスクです。
逆に、交渉の余地が生まれるのは契約更新時です。3ヶ月、6ヶ月を経過したあとです。現場での働きが見えたあとなら、判断材料があります。
もう1つ、余地が生まれる場面があります。現場の増員が決まった瞬間です。既存のフリーランスが紹介や面接サポート、メンターを引き受けると、その人の提供価値が上がります。単価アップが通りやすくなる局面です。これは発注側としての実感です。
発注側から見て、単価が上がる人と上がらない人
| 上がらない人 | 上がる人 |
|---|---|
| 与えられたタスクを書くだけの人 | 課題を言語化できる人 |
| 仕様の不備を指摘できない人 | 現場の意思決定コストを減らせる人 |
| コミュニケーションコストが高い人 | ドキュメント化・技術選定の根拠説明・メンターまで巻き取れる人 |
(2026年10月10日時点の、筆者の発注側としての判断基準より)
左の列は、技術力があっても当てはまることがあります。実装ができることと、現場の運用コストを下げることは別の評価軸だからです。
引き留める動機は発注側に構造的に存在します
もう1つだけ、構造の話を書きます。要員が抜ければ、その契約の売上は止まります。だから発注側には、引き留める動機が構造的に存在します。
ここから先、「だからこう交渉すべき」とは書きません。特定の交渉手法は勧めません。他社の社内でどう決裁されているかは、筆者には分からないからです。書けるのは動機の構造までです。
単価より先に見る場所があります
最後に、この記事の範囲を超える話を1行だけ添えます。手取りを大きく動かすのは、エージェントのマージン率よりも案件が何次の商流にあるかです。自社の実数を使って別記事で計算しています。
- フリーランスの手取りはマージン率より商流で決まる|SES経営者が自社の実数を出して説明します
- 商流マージン計算機|エンドの発注額から、要員に渡る額を出す
- フリーランスエージェント3社の面談で聞かれたこと
繰り返しますが、この記事の数字は筆者1人が3社から受けた提示の記録です。1〜3年の時期のずれがあります。同じ条件で同じ額が出るという話ではありません。
持ち帰ってほしいのは、額そのものではなく扱い方です。提示額はレンジで示されます。上にも下にも動きます。そして確定したあとでも、断るという選択は残っています。


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