商流制限とは|n次請け以上は契約不可という条件

登録する側と発注する側の両方から フリーランス

この記事の要点

  • 筆者はSES企業を経営しており、エージェントとは一部競合する立場。そのうえで書いている。
  • 商流制限とは、クライアント側が「n次請け以上は契約不可」と定める制約。登録してみるまで知らなかった。
  • 商流が深い会社は、そもそもその案件に参画できない。単価交渉以前に土俵に乗れない。
  • 自社の実数では、エンド100万円 → 85.00万 → 72.25万 → 要員65.03万円。商流が深いと手取りも落ちる。
  • エージェントは直請けのパイプラインを持つため実質1次になりやすい。ただし「エージェントなら必ず浅い」という意味ではない。各社の案件構成は確認していない。

フリーランスエンジニア向けの案件情報を見ていると、「商流が浅い案件です」という書き方に出会います。筆者もこの「商流」という言葉の重さを、エージェントに登録するまで正確には分かっていませんでした。

この記事では、商流制限(しょうりゅうせいげん)とは何かを、筆者自身の登録記録と、自社の実際のマージン率から説明します。一般的な解説ではなく、自分が見た範囲の事実だけを書きます。

筆者はSES企業を経営しており、エージェントとは一部競合する立場です

最初に立場を開示します。

筆者はフリーランスエンジニアとして複数のエージェントに登録し、面談を受けた経験があります。同時に、SES企業を経営して案件を発注する側でもあります(取得日2026年10月10日、運営者本人の記録)。

SESとは、エンジニアの作業時間を提供する契約形態の総称です。自社はこの形で、エンド企業直、または1次請け(元請けSIer)直の案件を中心に受注しています。

つまり筆者は、フリーランスエージェントとは一部競合する立場にあります。エージェントに流れる人は、自社にとっては受注できなかった人でもあるからです。

そのうえで、自分に不利な結論を先に書きます。

多くの場合、エージェント経由のほうが要員の手取りは高くなりやすいです。

理由はエージェントが親切だからではありません。商流の構造の問題です。以下、その構造を自社の数字で説明します。

商流制限とは、クライアントが「n次請け以上とは契約しない」と定める制約です

筆者がエージェントに登録して初めて知ったことが2つあります(取得日2026年10月10日、運営者本人の記録)。

  • 商流制限が存在すること。n次請け以上は契約不可、というクライアント側の制約です
  • 支払いサイトが会社によって大きく違うこと。こちらは後半で触れます

商流制限は、発注元であるクライアントが定める条件です。エージェントや受注側のSES企業が決めるものではありません。ここは誤解されやすい点です。

「2次請けまで」と決められていれば、3次の位置にいる会社は、どれだけ良い人材を提案しても契約の対象になりません。価格の話ではなく、契約可能な相手の範囲の話です。

筆者が登録・面談したのは3社です。

エージェント 登録時期 提示単価(月) 結果
レバテックフリーランス 約2年前(2024年ごろ) 80万〜85万円 83万円/月で契約成立
ITプロパートナーズ 約1年半前(2025年前半ごろ) 50万〜65万円(週3〜4日) 週3日リモートで55万円/月に着任
ギークスジョブ 約3年前(2023年ごろ) 70万〜75万円 75万円で確定したが辞退

いずれも運営者本人の記録です(取得日2026年10月10日)。

なお、商流制限を設けている企業名や、どの業界に多いかといった傾向は書けません。筆者がこの条件を直接聞いた経験が限られるためです。資料として一般化できる材料がありません。

商流の数え方は、エンドから数えて自分が何番目かです

「n次請け」の数え方を、自社の典型的な契約形で示します。

自社の典型的な形は次のとおりです(取得日2026年10月10日、運営者本人の記録)。

  • エンド企業(システムを実際に使う発注元)
  • 元請けSIer(1次)
  • 自社(2次)
  • 要員(フリーランス/個人事業主)

エンド企業から数えて、契約が何回受け渡されたかで「何次」が決まります。元請けが1次、その下が2次です。自社はここに入ります。

自社が入る位置は、基本的に2次か3次です。エンド直はほぼ無理です。エンド企業は取引先に最低資本金1億円といった条件を課すところがほとんどで、設立したばかりの会社はその母集団に入れません。

読者が自分の位置を知る方法については、筆者は一般論を書けません。筆者の場合は、聞いて分かりました。それ以上の確かめ方は経験の蓄積がないため書かないでおきます。

商流が深い会社は、単価交渉の前にその案件の土俵に乗れません

ここがこの記事の核です。

商流制限はクライアント側の制約です。したがって、条件を満たさない会社は、提案そのものが通りません。単価を下げて競うという選択肢すら出てきません。

発注側として見ていると、この影響は静かに効きます。案件情報が回ってこない、あるいは回ってきても「この商流では出せない」と判断して降りる。その繰り返しです。

商流が深くなると、受けられる案件の母集団そのものが縮みます。これは筆者の会社にもそのまま効いています。浅い位置を選べる立場にはなく、エンド直の取引には最低資本金1億円といった条件が付くことが多いため、設立したばかりの会社はその手前で弾かれます。

整理すると、商流の深さは2つの形で効きます。

  • 参画可否:商流制限に引っかかると、そもそも契約できません
  • 手取り:商流が1つ挟まるごとに、おおむね10〜15%のマージンが発生します(自社および自社が関わる商流での実数、取得日2026年10月10日)

単価の話だけを気にしていると、前者が見えません。商流制限は「単価が下がる」ではなく「契約できない」という形で現れます。

自社の実数:エンド100万円が要員に65.03万円で届くまで

手取りのほうを、自社の実数で示します。

エンド発注額が月100万円の案件で、3次SESまで挟まった場合の内訳です(運営者本人申告、取得日2026年10月10日)。

段階 マージン率 残額
エンド発注 — 100.00万円
元請け(1次) 15% 85.00万円
自社(2次) 15% 72.25万円
3次SES 10% 65.03万円(要員へ)

自社(2次)のマージンは15%です。この数字は自社の実数であり、業界の標準値ではありません。

エンドが払う額と要員に渡る額の比を、自社の経験から言うとこうなります。

  • 直請け・1次請け:10対8(中間コストは約15〜20%)
  • 3次・4次の深層商流:10対5〜6(エンド提示額の半分程度しか渡りません)

マージン率は複利で効きます。1段深くなるごとに、残額が1割前後ずつ削られていく形です。

次は試算です。実在の案件ではありません。上記のマージン率を、エンド発注120万円/月に当てはめた計算です。

経路 計算 要員の手取り
1次(マージン15%と置く) 120×0.85 102.0万円
1次(マージン20%と置く) 120×0.80 96.0万円
3次(15%→15%→10%) 120×0.85×0.85×0.90 78.0万円
4次(15%→15%→10%→10%) 上記×0.90 70.2万円

同じエンド発注120万円の案件で、1次と3次の差は月18万〜24万円です。年にすると216万〜288万円になります。

幅があるのは、1次のマージンを15%と置くか20%と置くかで結果が変わるためです。前者なら102.0万円と78.0万円で月24万円差、後者なら96.0万円と78.0万円で月18万円差です。

この計算を自分の条件で試したい方は、商流マージン計算機|エンドの発注額から、要員に渡る額を出すを使ってください。商流の深さと手取りの関係は、フリーランスの手取りはマージン率より商流で決まるで自社の数字を使ってさらに詳しく書いています。

エージェントは直請けのパイプラインを持つため実質1次になりやすい、までが言える範囲

冒頭に書いた「エージェント経由のほうが手取りは高くなりやすい」の理由を説明します。

エージェントは直請け(エンド直)のパイプラインを持っています。この場合、構造上は実質1次です。中間が1つしか挟まりません。

一方、小規模SESを経由すると商流が3次・4次と深くなりやすくなります。加えて各社が営業固定費と社内留保を引くため、要員への還元額が目減りします。

つまり、手取り差の理由はマージン率の差ではなく、商流の深さにあります。これは発注側として自社の数字を見ている立場からの説明です。

ここで、書けないことを明示しておきます。

  • エージェント各社のマージン率は書けません。レバテックを含む主要エージェントは、マージン率を公式に公開していません。Web上に「10〜15%」という数字は多数出てきますが、一次ソースが確認できませんでした
  • 本記事で使った10〜15%は、自社および自社が関わる商流での実数です。エージェント各社の数字ではありません。ここを混同しないでください
  • 「エージェントなら必ず商流が浅い」とは言えません。筆者が登録したのは3社のみで、各社が何次の案件をどれだけ抱えているかという案件構成は把握していません

言えるのは、筆者が受けた3社の提示を比べた範囲の話までです。

比較軸 ギークスジョブ レバテックフリーランス
想定案件 老舗SIer配下の基幹刷新 大手Web系バックエンド
提示単価(月・週5換算) 70万〜75万円 80万〜85万円
最終 75万円で確定したが辞退 83万円で契約

週5換算で、老舗・SIer系案件が中心のギークスジョブ(70万〜75万円)に比べ、直請け比率の高いレバテック(80万〜85万円)のほうが月5万〜10万円高い提示でした(取得日2026年10月10日、運営者本人の記録)。

ただし、これは3社の提示を比べただけの話です。各社の平均値ではありません。案件の性質も違います。辞退したギークスジョブの案件は、出社必須で残業も多めでした。単価だけで優劣は決められません。

商流を確認するタイミングは、単価を聞くときと同じ場面です

読者が次に取れる行動を、筆者が実際にやった範囲で書きます。

筆者は、自分が何次に位置するかを聞いて把握しました。やったことはそれだけです。確認方法の一般論や、商流を浅くする交渉術は経験がないため書きません。

単価を確認する場面は、商流を確認する場面でもあります。商流が深ければ、提示された単価の背景にある発注額はもっと大きいはずだからです。

エージェント面談で求められたことも書いておきます。希望単価は「最低ライン(これ以下なら受けない)」と「目標ライン」に分けて出すよう求められました(取得日2026年10月10日、運営者本人の記録)。この2本立てで考えておくと、面談で詰まりません。

商流とは別に、手取りを動かす2つの条件

最後に注意点を2つ挙げます。どちらも商流とは独立して手取りに効きます。

1つめは支払いサイトです。これが、登録して初めて知ったもう一方の条件でした。

会社 支払い条件
レバテック 月末締め翌月15日払い(本人の実体験。公開情報とも一致)
他社SES/エージェント 30日〜45日サイト(翌月末・翌々月5日払いなど)

同じ単価でも、入金が1か月以上あとになると、開業初期の資金繰りは変わります。単価だけを比べていると見落とす項目です。

2つめは準委任契約の精算幅です。準委任契約とは、成果物ではなく業務の遂行そのものを約束する契約形態です。

筆者の契約では、精算幅は140時間〜180時間でした(中間160時間基準、取得日2026年10月10日、運営者本人の記録)。この範囲を下回ると控除、上回ると超過手当という扱いです。実際に外した月に何が起きたかは、準委任の精算幅140〜180時間を実際に外した話に書きました。

商流制限は、案件に参画できるかどうかを決めます。商流の深さは、手取りの額を決めます。支払いサイトと精算幅は、その手取りがいつ、いくらで確定するかを決めます。

単価という1つの数字だけでは、このどれも判断できません。

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