この記事の要点
- 経費を売上の30%とすると、売上1,050万円・利益約735万円付近で法人が有利に転じる
- 利益350万〜600万円では法人化で手残りが減る。社保の労使合計・税理士30万・均等割7万が効く
- 筆者が法人化した利益約600万円では計算上−248,454円。前提を変えれば分岐点も動く
この計算の前提|令和8年分・協会けんぽ東京・実効税率による概算
この記事は税務相談ではありません。正確な税額や社会保険料は、税務署や税理士に確認してください。ここに示すのは、当サイトの計算機で出した概算です。法人税額も実効税率による概算で、正確な額は決算で確定します。
出典は、2026年10月28日取得の当サイト計算機の仕様書(tools/SPEC_houjin_simulator.md、tools/verify_houjin.py)です。対象は令和8年(2026年)分の確定申告です。
比較の条件は次のとおりです。
- 役員報酬は5〜10万円刻みで全探索し、手残りが最大になる額を使います。役員報酬を動かすと税と社会保険が同時に動くため、手計算では求められないからです。
- 社会保険料率は協会けんぽ東京・令和8年度の値です。他県は異なります。
- 法人税等は実効税率で概算します。法人所得800万円以下は23%、800万円超は34%です。利用者が変更できます。
- 法人住民税の均等割は70,000円です(資本金1,000万円以下・従業員50人以下)。
- 税理士費用は年300,000円、設立費用は0円です(定常状態で比較するため)。
- 給与所得控除の最低保障は、令和8・9年分で65万円から74万円(740,000円)に変わっています。
法人化シミュレーターはこちらです。個人側の計算順序は個人事業主の税金の計算方法にまとめています。
利益帯ごとの計算結果|利益350万〜600万円では法人化で手残りが減る
出典は2026年10月28日取得の当サイト計算機の仕様書(SPEC_houjin_simulator.md)の計算結果です(令和8年分)。差額は「法人化−個人のまま」で、マイナスなら法人化した方が手残りが減ります。
| 売上 | 利益 | 個人のまま | 法人化 | 差額 | 最適な役員報酬 |
|---|---|---|---|---|---|
| 500万円 | 350万円 | 2,679,888円 | 2,194,203円 | −485,686円 | 2,790,000円 |
| 800万円 | 600万円 | 4,279,988円 | 4,031,535円 | −248,454円 | 3,600,000円 |
| 1,200万円 | 900万円 | 5,991,906円 | 6,341,535円 | +349,628円 | 3,600,000円 |
| 2,000万円 | 1,500万円 | 9,182,179円 | 10,682,413円 | +1,500,234円 | 5,200,000円 |
| 3,000万円 | 2,200万円 | 12,674,754円 | 15,302,413円 | +2,627,658円 | 5,200,000円 |
売上に対する利益の比率は行ごとに異なります。そのため、表は利益の列で読んでください。差額は仕様書の記載値をそのまま掲載しています。表に並ぶ2つの額を引くと1円ずれる行があります。
表から読めるのは次の点です。利益350万円と600万円の帯では、法人化すると手残りが減ります。利益900万円以上では法人化の方が多く残ります。最適な役員報酬は、表の中で279万円・360万円・520万円の3段階でした。
損益分岐点は売上1,050万円・利益約735万円付近|ただし前提で動く
経費を売上の30%とした全探索の結果では、売上1,050万円(利益約735万円)付近で法人が有利に転じます。出典は2026年10月28日取得の当サイト計算機の仕様書と検証スクリプト(verify_houjin.py)です(令和8年分)。
これは「◯◯万円を超えたら法人化すべき」という意味ではありません。前提を変えれば分岐点も動きます。経費率が違えば分岐点も変わります。経費率や料率は法人化シミュレーターで変えて確かめられます。
この計算には次のものが含まれていません。どれも分岐点を動かしうると考えています。
- 消費税(インボイス登録の有無、2期免税)。2期免税は、設立から一定期間、消費税の納税が免除される場合がある制度です。
- 役員賞与・事前確定届出給与
- 退職金
- 社宅・出張日当
- 欠損金の繰越控除
- 都道府県による事業税・均等割の差
社会保険料率は協会けんぽ東京の値です。他県では異なります。法人税額は実効税率による概算です。
下の利益帯で損になる3つの理由|社会保険は労使合計で見る
利益が小さい帯で法人化が不利になる理由は、3つに整理できます。出典は2026年10月28日取得の当サイト計算機の仕様書(SPEC_houjin_simulator.md)です。協会けんぽ東京・令和8年度の料率です。
理由1:社会保険は労使合計で見る必要がある。
労使折半とは、保険料を会社と本人が半分ずつ負担する仕組みです。法人では、会社側の負担分も会社の金から出ます。1人会社の場合、その会社の金は実質的に本人の金です。そのため、折半の片側だけを見ると負担を小さく見誤ります。合計で見ることが必要です。
| 区分 | 料率 | 負担 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 9.85% | 労使折半 |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23% | 労使折半 |
| 介護保険(40〜64歳) | 1.62% | 労使折半 |
| 厚生年金 | 18.30% | 労使折半 |
| 子ども・子育て拠出金 | 0.36% | 事業主が全額 |
標準報酬月額には上限があります。健康保険は1,390,000円、厚生年金は650,000円です。厚生年金は高い報酬では頭打ちになります。表の上の帯で差額が開いた一因は、この上限だと筆者は考えています。これは一次情報から直接言えることではなく、筆者の判断です。
理由2:税理士費用が年30万円かかる。これは既定値です。
理由3:法人住民税の均等割7万円は赤字でもかかる。利益が小さくても、この額は必ずかかります。
売上800万円・利益600万円では、計算上は法人化で−248,454円|表の行の読み方
表の「売上800万円・利益600万円」の行は、法人化の計算が個人のままより248,454円少なくなる条件です。出典は2026年10月28日取得の当サイト計算機の仕様書です(令和8年分)。個人のまま4,279,988円、法人化4,031,535円、差額−248,454円、同条件の最適な役員報酬は3,600,000円です。
この条件では、計算の範囲で見ると法人化すると手残りが減ります。経費30%前提の分岐点(売上1,050万円・利益約735万円付近)よりも下の帯です。
この記事は計算結果だけを扱い、個人の判断や経緯は扱いません。
ご自身の数字で確かめる場合は、法人化シミュレーターで売上と経費率を入れてください。ただし正確な額は税理士に確認してください。


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